はじめに

バブル崩壊から始まった「失われた30年」。この長い停滞の時代の中で、日本は経済的な力だけでなく、「自分の頭で考え、選び、問い直す力」、いわば心の免疫力までも失ってしまったのではないだろうか。

その結果、「国が認めているから」「CMで見たから」「有名人が宣伝しているから」といった表面的な情報に疑問を持たない人が増えているように思われる。この現象は、乳酸菌や免疫の世界にも顕著に表れている。

「乳酸菌は体に良い」という認識が広く浸透し、ヨーグルト、乳酸菌飲料、サプリメント、トクホ、機能性表示食品といった製品群は、「腸まで届く善玉菌」や「菌活による免疫力向上」といったマーケティングメッセージとともに、消費者の健康意識に訴求し続けている。

テレビコマーシャルでは連日のように「○○億個の乳酸菌」「生きたまま腸に届く」といったフレーズが流れ、健康雑誌や書籍でも乳酸菌の効果を謳った記事が数多く掲載されている。

しかし、善玉菌を飲めば腸内環境が改善する、乳酸菌が数百億個入っていれば免疫力が上がる─これらはどれも科学的なように聞こえるが、実はそれらの情報は真実に近づくための情報ではなく、誰かの都合で組み立てられた幻想や願望に支えられている場合が多い。

さらに深刻なのは、その願望に基づいて乳酸菌製品を定期的に摂取しているにもかかわらず、感染症への罹患、アレルギー症状の悪化、消化器症状の長期化といった問題が現実に存在することである。

この現象の背景には、従来の「腸内に菌を送って足せば健康になる」という単純な発想の限界があると私は考えている。

このように、乳酸菌と健康の関係に興味を持っている多くの人は、マスコミによる誤った宣伝や報道によって、乳酸菌サプリの摂取など別の方向に導かれているが、実は真実という扉の一歩手前に立っているだけなのではないかと思う。

私は30年以上にわたり、乳酸菌の代謝物(metabolites)に高い機能性を見出し、それをさらに高めるべく研究を続けながら、代謝物の特質を生かした食品を開発し続けてきた。その過程で確信したことは、腸内環境というものは、何をしてもその人なりの姿、状態に戻ってしまうということである。

だからこそ、腸内環境を変えようとするのではなく、腸内細菌から発信される信号(情報)そのものに着目し活用することが重要だと考えるに至った。

わずか1ミクロンという微小な生物が生み出す一滴の代謝物が、私たちに百もの福音をもたらす驚異的な世界は、現代科学の最前線でようやく解明されつつある。

この肉眼では見えない微生物の営みが、いかに私たちの健康と生命活動に深遠な影響を与えているかを、私は30年の研究を通じて追求し続けてきた。

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