【前回の記事を読む】誰にでも訪れる“加齢”による眼の障害、老眼と白内障。立つ・歩くといった日常的な行動も難しくなり…
第1章 「見え方」は人生の質を左右する
眼の不調は体全体の不調につながる
視覚機能の障害が招く日常生活機能の低下
眼の障害によるデメリットは、患者さんの行動を制限し、日常のリスクを増大させるだけではありません。行動が制限されるということは、身体活動の減少を意味し、これは日常的な生活機能の低下につながります。
具体的にどのようなことが起こりえるのか、たとえば、①バスや電車を使って外出し、②日用品の買い物をして、③自分で食事の用意をする場合を考えてみましょう。
①外出や、②買い物が問題なく行えていたとしても、③自分で食事を用意することに時間がかかるようになって次第に億劫(おっくう)になると、外食やコンビニ食、インスタント食品に頼るようになります。
食事の準備をするという適度な作業負荷がなくなること自体も好ましくありませんが、さらに献立を考えたり、調理したりすることにかかわっていた脳と身体の機能の衰えも考えられますし、なによりも栄養価が偏ることによって生活習慣病のリスクが高まります。
次第に、①外出や②買い物も億劫(おっくう)になってくると、運動量が減少して足腰が衰え、ますます生活習慣病リスクは増大します。
眼の不調からはじまったトラブルが、高血圧や糖尿病、心疾患などの全身疾患に及ぶこともありえるのです。全身疾患を患えば、さらに行動が制限されますから、友人との交流、社会とのかかわりが希薄になることで、健康な心の状態を保つことが難しくなるかもしれません。
これは想定しやすい一例にすぎませんので、その人が生活する環境や生活習慣によっては、さらにさまざまなことが起こりえるでしょう。眼の不調に端を発して、身体機能の衰えや不調、全身疾患、ひいては社会生活のありようから、心の状態まで、あらゆる分野が影響を受ける可能性があることを心にとどめていただきたいと思います。
脳と心の問題
前述したように、眼を通して脳が得ている視覚情報は、五感全体で得る情報の8割以上に及びます。
ふだんはあまり意識しないことですが、脳に対する刺激はとても重要です。眼が不調をきたすと、当然、脳が取り入れる情報量も減少します。そうなると、脳の働き自体にも影響があり、「うつ病」や、うつ病の前段階ともいえる「抑うつ状態」、「認知症」などにつながるリスクが高くなることが指摘されているのです。
