海外での研究では、視覚障害のある高齢者のうつ病の割合は、眼に異常のない人たちの少なくとも2倍程度であると報告されています。また、視覚障害のある人たちのうち、約半数がうつ病か抑うつ状態にあったという日本の報告もあります。

眼の障害がうつ病や抑うつ状態を招くことがあるのは、脳に対する情報量の減少だけが問題ではないでしょう。行動が制限されることから、友人や他者との交流など社会生活が営みにくくなること、それに伴う孤独感や社会的疎外感、視力の悪化による不安など、多くの要素が絡み合った結果、起こると考えられます。

認知症の発症に関しては、脳に対する視覚情報量の減少による認知機能の低下とともに、新聞、本や雑誌などを日常的に読む、新しい知識を積極的に得ようとする、あるいは文章を書いたりするといった「知的能動性」の低下も無視できません。

こうした軽視できない現状がある一方、白内障手術後の視機能の改善によって、高齢者の認知症やうつ病の症状も改善するという報告(平城京コホートスタディ)があるのは、私たち眼科医にとっても喜ばしい限りです。

眼の障害から脳や心の病気にいたったとしても、眼が改善すれば少なからぬ方の脳や心の状態も改善するのですから、「歳だから眼が見えにくくなることはしょうがない」と、これを放置しておかず、ぜひ積極的に治療することをおすすめします。

眼の見え方で変わるQOL(生活の質)

患者さんへの負担が小さい白内障手術

今ではかなり一般的になった、健康・医学の概念を表すQOLという言葉があります。クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略語で、人生における「生活の質」を表し、人間関係や住環境などを含んだ広い領域での充足を意味しますが、特に医療では心身の健康と、それを基礎とした生活、ひいては人生の充実を問題とします。

がんなどの重篤(じゅうとく)な病気の場合、患者さんの心身への負担が大きい治療を続けることによって「人間らしい生活」が営めなくなるよりも、徒(いたずら)な延命治療をやめ、終末医療を選択することによって、QOLを求める考え方が一般的になってきました。「病気は治ったけれども、QOLは低下した」では意味がないということです。

 

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