半年前に看護大学を卒業し、今は大学病院で働いている。職場は女性ばかりで、なかなか出逢いがない。そんなとき、婚活サイトを同じ職場の人から紹介された。萌はまだ二十三歳ということもあって、結婚願望はそれほど強くはないが、いい人にめぐり逢えたらと思って登録した。

ICカードをかざして改札を抜け、ホームで少し待ってから、新宿行の電車に乗った。運よく急行だった。空席を見つけて座り、スマートフォンを眺(なが)める。そして、これから会う相手との、これまでのメッセージのやり取りをスクロールしながら振り返っていた。

わかっていることは、五歳年上で、システムエンジニアの仕事をしている人であること。それから、学生のときに、チルド食品を扱う倉庫でアルバイトをしていたこと。そして、神奈川でひとり暮らしをしていること。

〝これだけの情報で、うまく会話できるかなぁ〟

スマートフォンから目を離して周りを見ると、車内は混雑し始めていた。学生のグループ、家族連れなどで賑(にぎ)わう電車は今、成城学園前駅に停車していた。

電車が発車すると同時に、緊張を和(やわ)らげるため、音楽プレーヤーをバッグから取り出して音楽を聴く。そして下北沢を経て、代々木上原駅に着くと、立っていた人、座っていた人が、わらわらと下車していった。

萌は、次の終点の新宿まで乗ってから、JR山手線に乗り換える。待ち合わせ場所は池袋駅だ。新宿からは、十分とかからない。

〝だいぶ早く着いてしまいそうだな……〟

と、スマートフォンの時刻表示を見ながら萌は思った。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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