大学四年生の冬には、祥子とは年賀状の付き合いだけになってしまった。送られてきたのは、子どもを抱いた写真入りの年賀状で、旦那(だんな)さんも写っている。痩(や)せている祥子に対して、ずんぐりした体型だ。

まゆは、その写真を見ながら、「付き合いました」、「結婚しました」という報告を受けただけで、この旦那さんがどんな人なのか、これまで祥子から何も語られていないことを改めて思った。

〝もしかしたら祥子は、相手のことをちゃんと知らないまま結婚してしまったのではないか〟

そんな不安がよぎり、また前みたいに裏切られるのではないかと思うと、電話をかけずにはいられなかった。

「祥子、久しぶりだね」

「久々に話せて嬉しい。まゆは就職決まったの?」

「うん、春からカード会社に就職するよ。ところで祥子は今幸せ?」

「いきなりどうしたの? 子どもが生まれて、毎日大変だけど、幸せなんじゃないのかな」

「それならいいけど」

電話を切ったあと、

〝祥子は、ああ言ってるのだし、あまり心配しすぎるのもよくないよね〟

と、まゆは自分に言い聞かせた。

祥子の悲しい顔はもう見たくない。次に会うときは、ふたりとも笑顔で会いたい。まゆにとって祥子とは、自分のことと同じくらい大切な存在なのだ。

「幸せになってよ、マジで」

秋晴れの三日月

すっかり秋めいた陽気の土曜日、萌(もえ)はひとり暮らしをしているアパートを出た。歩いて十分ほどのところに、小田急線の向ヶ丘遊園駅がある。駅周辺には大学がいくつかあり、このあたりは、いわゆる学生街。手頃な値段の飲食店が並ぶ通りを抜けていく。