好きな人には愛想(あいそ)を尽(つ)かされ、さやかの部署内での信用もガラガラと音を立てて崩(くず)れ落ちた。そして一か月後、さやかは総務部へ異動になった。営業部での仕事は、もう任せられないという上司の判断だ。
それから間もなく、岡嶋さんに彼女ができたことを風のうわさで聞いた。さらに追い討ちをかけるように知らされたのが、岡嶋さんの彼女は同じ部署の人だということだった。
仕事を終え、さやかの足は表参道へ向いていた。スターバックスコーヒーでホットココアのショートサイズを買い、歩道脇に置かれた椅子(いす)に座る。
さやかの前を絶え間なく歩く人々は、これから家路につくのであろう、みんな足早に歩いている。目の前にはシャネルやディオールなどのハイブランドのお店が並んでおり、背後には表参道ヒルズが建っている。そんな景色に囲まれながら、まだ残暑が厳しい中、日がだんだん短くなっていく様子をぼんやり眺(なが)めていた。
涙が溢(あふ)れてきた。とめどなく流れる涙を、ジェルネイルが施(ほどこ)された指先で拭(ぬぐ)う。
泣きながら飲むホットココアの味は甘く、さやかの体に染(し)み渡った。
泣き止んでふと、空を見上げると、満天の星空。なんだか星空に包まれているような気がして、心が癒(い)やされた。もう、ちっぽけな噓はつかない、虚栄(きょえい)も張らない。そういう大人になろうと、さやかは心に誓った。
次回更新は2月6日(金)、21時の予定です。
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