「あの夜、歩いているところをたまたま連中に見つかりましてね。私は取り立ての仕事を辞めたつもりだったのに、どうしても抜けさせてくれないんですよ」

「それじゃあ、あんたも妹さんと同じような境遇に置かれているということか」

「仰せの通りです」

結城は兄妹そろって哀れだと思った。哀れな奴ほど自分に近寄ってくる。自分と同じ哀れなにおいを嗅ぎつけ、哀れな世界を楽しもうとする。類は友を呼ぶとはこのことだ。

「それで、何のアルバイトを紹介してくれるんだ」

結城は問い続けた。

「お金を奪うのです」

間下は平然と答えた。

「奪う? やばい連中のお金を奪うのか」

「はい」

「そんな危ない橋を渡れるわけがないだろう。ばれたら後でどんなひどい目に遭うか、あんたの方がよく知っているはずだ」

「心配はいりません。二人で覆面でもして、運び屋の若い男からボストンバッグを奪い、逃げればいいだけのことです。簡単なことですよ。若い女の方の面倒は妹に任せます」

「妹さんが加担するのか」

「ええ。すでにおわかりのことでしょうが、私たちは金にとても困っているのです。あのビルの事務所に金が密かに運び込まれていることは組織内でも一部の人間しか知りません。私はたまたま知っただけで、犯行が起きても、私が計画したとは誰も思わない。対立している組織の仕業とぐらいしか、推測しないでしょう」

「失敗したらどうするんだ」