何も悪い事はしていないのに
癌と言われた時、たいていの患者さんは動揺します。その時患者さんの反応はどうかといえば、何を言われているのか想像できない、というのが最もよくある反応です。
タカシ先生のクリニックにも癌患者さんが時々来院されます。規則正しい生活をしている患者さんなら納得できますが、飲酒や喫煙を繰り返している患者さんですら、癌になった時、次のような事を言われます。
「先生、私は癌になるような悪い事は何もしていません。なぜ私が癌になるのでしょうか」
飲酒や喫煙をしていても、患者さんは体に悪い事をしているとは思っていません。それは当たり前かもしれません。タバコや酒はコンビニでも売っているのですから。
しかし酒とタバコを同時に飲んだり吸ったりすれば、胃癌、肺癌、食道癌、膀胱癌等になりやすい事は常識になっています。そのような事は知りたくないか知ろうとしないだけなのでしょう。告知後しばらくすると患者さんが落ち着いてきますので、
「今は癌になっても治療法が進歩し治る人もたくさんいます。悪い生活をあらためるチャンスと思って、酒やタバコを控えてください。気持ちをしっかり持って治療を受けましょう」と言っています。
毎日20本以上もタバコを吸っている人は、肺癌にならなくとも肺気腫になるかもしれません。
肺気腫は初期には自覚症状がありません。ある日風邪や気管支炎になって、呼吸苦がひどくなり受診する事があります。そんな時、
「先生なぜこんなに息苦しいのですか。私は何も悪い事はしていないのに。一体何が起こったのですか」
と訴えます。そのような時には、患者さんの肺のCTを見せて、肺がつぶれてしまっているのを見せます。タバコを吸っていればこのような肺になります、と説明し納得してもらいます。
人間は経験して初めて理解できる事が多いものです。癌にならなければ癌患者の絶望感はわかりません。脳梗塞にならなければ、脳梗塞患者の不自由な体が理解できません。心筋梗塞にならなければ、発作時の恐怖感や痛みは経験できません。
これらの病気は人生を反省し振り返る良き経験となりますが、やはりならないに越した事はありません。規則正しい生活や体に悪い事をしないほうが、最先端の医療よりずっとずっと重要です。
聖人や仙人のような生活では、ほとんどの人は生きがいを感じる事はないかもしれません。しかしあとで後悔するより、規則正しい生活をして元気に生きていくほうがいいと思います。
でも、やっぱりタバコやお酒やめられないですよね。
次回更新は1月30日(金)、14時の予定です。