「ところで、わしは、ノアという者(もの)なんじゃが、最近(さいきん)、自分のことを神(かみ)と名のる者(もの)の声が聞こえてのう。

何でも、もうすぐ、この地上に大雨を降(ふ)らせて、わしとわしの妻(つま)とその息子(むすこ)たち夫婦(ふうふ)以外(いがい)の地上の全(すべ)ての生き物(もの)を滅(ほろ)ぼしてしまうつもりだから、『私(わたし)が言うような箱(はこ)の形の舟(ふね)を作って、決(き)められた動物(どうぶつ)や花の種(たね)をそれに乗(の)せて守(まも)るように』とおっしゃるんじゃよ」

おいらは、驚(おどろ)きながら言った。

「それは、大変(たいへん)なことだね」

彼(かれ)は、声を低(ひく)めにして言った。

「本当にそんなことが起(お)きるか信(しん)じられないけど、備(そな)えているにこしたことはないから、今、家族(かぞく)みんなで、箱(はこ)の形の舟(ふね)を作っている最中(さいちゅう)なんじゃ。ちょうど良(よ)かったよ。お前さんも、何かの器(うつわ)に植え直(なお)して、一緒(いっしょ)に乗(の)せてやるからな」

おいらは「ありがとう」と言った。

りっぱな舟(ふね)をノアたちは作ってくれたよ。その時だった。天から声がして、

「さあ、その舟(ふね)に乗(の)りなさい。地上は水であふれ、その水の上を長い日々をかけて、その舟(ふね)は漂(ただよ)い続(つづ)けるだろうから」

選(えら)ばれた全(すべ)ての生き物(もの)がその舟(ふね)に乗(の)った時、舟(ふね)の扉(とびら)は閉(し)まった。その舟(ふね)の中で、おいらは見ていたんだ。ノアたちが動物(どうぶつ)たちの世話(せわ)を心をこめてしている姿(すがた)を…………。