【前回記事を読む】「彼は海軍兵学校に進みたいときっぱり意志表示をしたんです」保護者面談で初めて明らかになった息子の夢。しかしその頃世界は…

一 俊介の進路面談

又二郎が表示された校内の順路を外れて、校庭を横切るように帰路につこうとした時、肋木や鉄棒、跳箱を相手に黙々と取組む生徒の一団が目に留まった。足が赴くままに近付き、一時時の過ぐるのを忘れて見学し、思うのであった。

「こうして厳しい運動の反復を通して、身心の鍛錬をしているわけか…。自分が同い年の頃を振り返ると幼稚だったな…。国を憂える事などさらさら無かったし、国を守る志等、頭の隅にも無かった。

それに引き換え、今時の若者は、大したもんだ…。俺にはよくわからねえが、日露戦争に勝利して日本は良くも悪くも変ったんだろうし、取り囲む世界も変ったんだろう。

だが俺は、そういう事に無関心だったから、視野も広がらなかったんだろう。しかしこの若者達は、まるで季節の移ろいを感じるように、来るべき時代の変化の方向を肌で感じているわけだ。大したもんだ…」

又二郎は独り納得がいったのか、その場から静かに離れた。