旅人は必死(ひっし)になって女の子のもとへと泳(およ)ぎ、そして女の子の手(て)を取(と)りました。

二人はなんとか水のない所まで行きつきましたが、二人とも頭(あたま)のてっぺんからつまさきまでずぶぬれです。

それでも二人はとても嬉しそうに笑(わら)っています。

旅人が女の子に言いました。

「よかったら、ボクと一緒(いっしょ)に旅をしませんか」

女の子は答(こた)えます。

「はい、喜(よろこ)んで」

さあ、二人の旅の始まりです。

ありがとうの魔法(まほう)―砂時計の中の唄姫 後日談(ごじつだん)

「君、名前(なまえ)は何ていうの?」

「レティ」

「そうか、レティっていうんだ。素敵な名前だね。ボクはアルフレド。アルって呼(よ)んで! これからどうぞよろしく」

そう言われたレティは、ニッコリと笑って答えます。

「こちらこそ、よろしく」

こうして始まった二人の旅は、さして大きな問題(もんだい)もなく穏(おだ)やかに過ぎていきました。

ただレティは、生(う)まれたばかりのヒナ鳥(どり)のような存在(そんざい)でした。自分の名前以外(いがい)は何(なに)も知らなくて、自分がどこの誰(だれ)で、あんな大きな砂時計の中にいたのかもまったくわかっていなかったのです。

なのでレティの分も、いろいろなことをアルフレドが毎日(まいにち)毎日やってあげていました。

「レティ、さァご飯(はん)の用意(ようい)ができたよ」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「レティ、水をくんできたよ」

「ありがとう」

「どういたしまして」