勢い良く玄関を開けて中に入ると、家具の位置など、景色が変わっていた。

「あら、亜紀さん。どうなさったの?」

思った通り、悠希さんがいた。もう驚きもしない。

「私の荷物を取りに来ただけ。直ぐに帰るから」

「お茶でも飲まれていきませんか?」

「結構です」

クローゼットを開けると、そこには私の私物はなかった。その代わり、床に置かれた籠の中に服とかが詰め込まれていた。

私は籠ごと持ち出して、南君のマンションにタクシーで戻って来た。

「捨てられていなかっただけマシか」

グシャグシャに詰め込まれた服を、一度洗濯して乾燥機で乾かした。

籠の中には、私の銀行手帳も入っていて、少し安心する。これで南君に買ってもらった服の代金を払える。

それにしても、もう一緒に暮らしている事を思うと、何だか腹が立ってきた。おそらく悠希さんが押し掛けたのだと想像できるけど、それにしても俊雄さんは甘すぎる。

別れを言い出したのは私だから、文句を言えた立場じゃないけど、その原因を作った当人がのうのうと夫婦生活をしているのかと思うと、辛いというより、やはり怒りが湧いてくる。

「忘れなきゃ。もうあの家に行く事もないんだし」

大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。

「この南君の家も出て行かなきゃ。今日、新しいとこが見つかると良いんだけど」

私は南君のマンションを出て、不動産屋巡りを始めた。

運良く、ワンルームの少し広めの部屋を見付ける事ができ、契約をした。職場にも近くて、便利な物件だ。

その夜、南君に出て行く事を話すと、そっか、と寂しそうな顔をしたけど、直ぐに明るい表情になり、引っ越しを手伝うとまで言ってくれた。

次の休みの日、引っ越しが決行され、私は新たな部屋に住む事となった。

そこからは、仕事に専念して、お店の二号店の店長に抜擢された。