【前回の記事を読む】これまでの哲学には〇〇が欠けている!「神」や「理性」といった観念の考察に必要な視点とは

序 哲学的観点とホルミシス効果

ホルミシスとは何か

この論考では生命のそもそもの発生に関して私はある仮説を提示することになる。そのために必要となる用語がホルミシス(hormesis)である。

この言葉は元はギリシャ語で刺激という意味である。これは生物・生理学的用語であり、一般には生体に有害である物質が適度な量であれば生体をむしろ活性化させるものという意味である。

つまり生物は自己にとって有害なものに直面するとそれに刺激され、それに対抗することでその身体機能を十分に発揮することによりそれを克服するということである。

このホルミシスはとりあえずは生物学的な特殊な効果であるが、生物の発生に深く関わっていること、また後で述べるようにホルミシス効果は実は物理的世界の至る所ですでに萌芽的に存在する普遍的な現象であると考えられ、そればかりか人間の生活のあらゆる局面で働いていることがわかる。

私がこのホルミシスについて知るにようになったきっかけは個人的な経験にあったのでまずそれをエピソードとして話しておきたい。

『サバイバルボディー』という本がある。副題には「人類の失われた身体能力を取り戻す」とある。この本はアイスマンという有名な人を取材したときの記録になるが、ここには氷点下二十度以下の気温の中で裸で過ごすとか、極めつけはキリマンジャロをパンツ一枚で登頂するようなことをする人たちのことが書かれている。

私はこれに触発されて体を鍛えようと思い冷水シャワーを始めた。この冷水シャワーは特に冬はかなりキツく体が悲鳴をあげるぐらいのストレスがある。

だが、これを毎日続けることで体は余分な脂肪が取れて引き締まってきた。また風邪をひくこともなくなった。それまでは一年に一度ぐらいは風邪をひいたものだった。

脂肪には二種類、白色脂肪と褐色脂肪というのがあり、前者はエネルギーを蓄えるためのもので、後者はエネルギーの発生専門といわれる。

体が寒さに直面すると褐色脂肪を燃焼させて体を温かくしようとする。現代人は寒ければすぐ服を着たり暖房できたりするので褐色脂肪は少ないといわれる。体は外部からストレスを受けることでそれに対抗して能力を出さざるを得なくなるのだ。