「仰せのままに」とソフィアは冷ややかな眼差しで、ミカエルを見送った。
笑みを浮かべてはいたが、その目は怒りの炎を燃え上がらせていた。物陰で聞き耳を立てていたガブリエルとラジエルはソフィアの言葉使いが何となく気になった。
「何かあるな!」
「ああ。少し調べないといけないようだな」
その時、叫び声が静かな宮殿に響き渡った。驚いたソフィアは苛立ち、怒声を張りあげた。
「何事だ! リリス! どこにおるのだ!」
「はい、ソフィア様、私はここにおります」
リリスは慌ててソフィアの前に出てひざまずいた。
「何事だ? 今の叫び声は何なのだ?」
ソフィアは眉間にシワを寄せながら怒鳴った。
「見てまいります」リリスはソフィアの寝室から飛び出した。怒りが収まらないソフィアはリリスの後を追い寝室を出た。
叫び声の主はアダムであった。ヤハウェはアダムをなだめようと必死にあやしていた。それを見たリリスは唖然として立ちつくした。
「リリス、下がりなさい!」
リリスの背後でソフィアが声を震わせながら叫んだ。
「あなたはヤハウェ様? 腕に抱かれているものは何ですか?」
ソフィアは不思議なものを見るかのようにアダムをまじまじと見た。
その時、イヴが大きなあくびをしながら部屋から出てきた。その姿を見てソフィアは青ざめた。「歩けるの? 少し大きくなってもいる」
「ソフィア、口を慎むのだ! この者たちは神が創造されたアダムとイヴ。我らに代わってこの地球を創りゆく者なり」
「地球を創りゆく者? アダム? イヴ?」
ソフィアはヤハウェの言葉が理解できなかった。狼狽してその場にくずれた。ギラギラした目がアダムたちに向けられていた。
「そんな弱々しい小さき者が、この地球を創りゆくって? それが神の考えなのか?」
ソフィアは込みあげる怒りを吐き出すと不敵な笑みを浮かべ、高笑いをしながら立ち去った。ソフィアの後ろ姿を見てリリスは震えた。ヤハウェもおぞましい威圧感を感じてアダムとイヴを抱きしめた。ガブリエルとラジエルは誰にも気づかれぬようにソフィアの後を追った。
「ラジエル見たか? アダムもイヴも大きくなっている気がするのだが」
「ガブリエル、お前も気づいたか。二人とも話もでき、歩くことまで……。いや、それより今はソフィアだ」
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