「どうしよう。鍵は壊せないよ」

柚子が困り顔をしていると、陽が潔く言い切る。

「野菜等の食品庫だとしたら、こんなに大きな冷蔵庫があるのに、おかしいと思う。それに厨房で鍵まで付けて何を入れておくの。怪しい。だから鍵は壊そう。誰か大きめのハンマーとスパナ二本用意できる人いない?」

「俺んち工務店やっているから、倉庫の方には結構な物があると思う」

蓮にそれならば幾つか持ってきてもらうことになったが、本当に壊してもいいものだろうか? 陽の言いっぷりにまた感服するが、石を呑んだような不安は残る。

この時期もう既に夕闇が迫り、空気も冷涼さを増していた。

「そろそろ警備員が回ってくる頃合いだから、今日はこれまでということで解散です」

思い出したように、私はみんなに声掛けする。

「そうそう、柱の数字メモっていって。各自模索してきて下さい」

明日は九時集合ということで帰ることに。

「おい柚子! 柘植と方角一緒なのか」

「えぇっ。まあ。そうね。颯太は詩と同じ方向なのよね」

「私と颯太は小、中、高と一緒でーす」

「べっ別に特に仲が良かったというわけじゃないぞ」

何を慌てているのか颯太が言う。

「そんなに強く否定することないじゃない」

ちょっと傷ついたふうの詩。

「はいはい。わかったわかった。気を付けて帰ってね」

「柚子も気を付けてな。違う意味でだぞ」

「何それ。帰った帰った!」

本当に颯太は何考えているんだか。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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