「この女の子はこの幼稚園に通っていませんでしたか?」

写真は確かにあの少女のものだが、一般人に死体の写真を見せるわけにはいかない。なので、少女の顔などが写っているところはわからないようにし、服と黄色の長靴だけが写っている写真を提示した。

「この写真って、この子死んでいるんですか?」

いかにも場の雰囲気を読めなさそうな若い先生が言い出した。こういう人間は自分の周りで誰が死のうとさほど心を痛めたりはしない。

それがワイドショーのネタにでもなって、ただテレビに映りたいだけの野次馬だ、と加賀は聞き込みをしている時、嫌という程肌に感じた。そして、そんな人間にはうんざりしていたし軽蔑もしていた。

人は誰かの死を目(ま)の当たりにして、自分の生を実感するのだ。口では可哀想にと言いながら、命を落とした者が自分や身内ではなくてよかった、とホッとしていることに気づいていない。そして加賀自身もそんな人間の一人であると以前から感じていた。

「どうしてそう思うのですか?」

先生は悪気があって言ったわけではないのだろうが、加賀は少女の死をあまりにも軽やかに口にした先生に対し怒りを覚え、いつもの鬱憤(うっぷん)を彼女に少なからずぶつけてしまった。

漂う雰囲気が悪くなったと察した少し年配の先生が追うように言葉を続けた。

「お顔が写っていないからなんとも言えないけれど。この園の子供たちは皆元気に通園していますから。多分知らないお子さんです」加賀を見据えて言い切った。

「そうですか。お時間取らせてすみませんでした」

加賀は年配の先生だけに頭を下げて園を後にした。検視の結果から死亡推定年齢は四歳から六歳と聞かされていた。

死体の発見が早かったため推定年齢にそれほどの誤差はないだろう、と加賀は考えていた。他にもいくつかの幼稚園や保育園を回ったが収穫はなかった。

そのまま署に戻る気にもならなかったので、ちょっと気晴らしに打ってみるか、と歩いていた通りの反対側にあるパチンコ店へと足を運んだ。店内は暖房が効いているためか人の熱気のためか暖かい。加賀は着ていたコートを脱ぎ一番端の台に座った。

次回更新は1月25日(日)、21時の予定です。

 

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