クーカの身体の最後の動きが終わろうとしている半秒前、脳内に同居している古生物の生存本能がクーカの意識を外に放り出したと考えたら、面白いというより超ヤバい壮大なドラマではないかとチッケは思う。

だからクーカは、つまりクーカの意識は外側への移動に成功しているのかもしれない。

「俺の身体がないのに俺いるの?」

きっとクーカは焦っているんじゃないかとその様子を想像して、チッケは少しだけクスッと微笑むのだった。

「やったね、クーカ!」

チッケは、声が詰まって涙がこぼれた。クーカに会いたいと心から思った。

目に見える姿は消滅しても、クーカは量子力学でいう素粒子や光子のような波動のような、或いは反物質、またはそれに近い何かになれたのかもしれないとチッケは思う。

そしてもしそれがあのニュートリノだとしたら何でも通り抜けて移動できるのだから、素粒子になったクーカがチッケの脳の中に入り込んでチッケが行動しようとする意識が生じる前の段階で、チッケの脳を物理的に動かすことは可能になる。

意識が生じる0・5秒前に脳が動くという物理的現象はこれまでのどんな学者の知力を用いても解明できていない。

人は自分の意思で物事を決めたと思っているが、本当にそうなのかはわかってはいないという。

脳みそから意識がどうして発生するのか、意識は科学的に定義できない。完全に正体不明なのだ。

意識という実態のないものが脳を動かすことほどホラーなことはない、ということから言えば、脳が動いてから意識が生じているという実験結果は動かぬ証拠という他ない。

意識の存在は物理や脳科学を超えた未知の現象だと言わざるを得ないのかもしれない、とチッケは思っている。

「ひょっとしたら、クーカの意識は素粒子の上に乗っかっていたりして……」

 

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