楽聖の崩壊
もちろん過去の偉大な作曲家たちは、音楽に特別の才能を示した天才たちだが、聖人ではなかった。女好きもいれば金にうるさかったり、中には社会不適合者のような者もいた。詐欺師まがいのような者までいた。
生身の人間だったのだ。たとえば、と言って次々と棚卸し現象的に列挙するのもどうかと思うが、ここでは既に知られているものに留めておこう。
シューマンはクララとの結婚問題で裁判沙汰にもなったが、実はシューマンは複数の女性と関係を持った。その中にはクララの父ヴィーク家の使用人もいた。ヴィークの、女たらしには娘をやれぬとするのも当然だろう。
ただしクララはこのような女癖の悪いシューマンと分かりながらも愛し続けた。それだけ愛は深かった。シューベルトが女郎通いの末、梅毒にかかり、その治療が原因で死去したとの暴露話は社会問題化し、なかなか受け入れられなかった。
日本の世界的シューベルト学者もしかりだった。それが今では解説書に事細かに書かれている。J・S・バッハの宗教心なども疑問視された。
以上のようなことが明るみに出たのは、ほんの半世紀ほど前のことだが隔世の感がする。このような暴露も構造主義の影響の一環だと思うのだが、因果関係は証明のしようがない。