(カロンとメロンだな。しっかりやれよ)

フィリダスはヘタイラに扮(ふん)した同志に目配(めくば)せし、アルキアスの前にいざなう。

松や樅の葉で顔が隠れているので、アルキアスもよもやこれが刺客であるとは予想だにしなかった。

「おお、来たか! ささ、ちこう、ちこう!」

アルキアスは、おおはしゃぎで手招きすると、美女を待つのももどかしく、にじり寄る。

「うぶなやつ。そう恥ずかしがらぬと、ほれ」

だが、女の手をつかもうとした、そのときである。

それまで淑やかに恥じらっていた女が、逆に彼の腕をむんずとつかみ、

「同志の仇(かたき)! 覚悟しろ!」

怒声とともに剣を抜き、冠をかなぐり捨てた。鎧を纏った屈強な男が、瞬時に眼前に出現したので、

「げっ! お、おとこ……!」

アルキアスは仰天、いっぺんに酔いが醒めた。が、しこたま飲んでいたから脚がもつれ、思うように動けない。

カロンはすかさずアルキアスを蹴り倒し、ずばりと剣をふりおろす。

「ぎゃッ!」

アルキアスは悲鳴をあげ、絶息した。

フィリッポスの方はメロンが始末し、宴席には裏切り者たちの死体が横たわった。

「やったな」

フィリダス、カロン、メロンは、固く手を握りあい、首尾を祝しあうと、

「のこる敵は、レオンティアデスとヒュパテスだ。やつらのもとにはペロピダスが向かっている。われらも助太刀に行こうではないか」

三人は武器を手に、同志のもとに急いだ。

 

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