夜になると森の送別会が開かれました。森を出て行くものが森の原っぱの真ん中にひとかたまりになり、今宵かぎりの会食をしました。その周りを残る動物たちが、取り囲んでいました。残るものたちは、今宵の夕食を食べずに、出て行くものたちにお腹いっぱい食べてもらっているのでした。
次の日朝早く、勝ち組のものたちは森を出て行きました。若虎の王様も例外ではありませんでした。王様は競技をする前から出て行くことを決めていたのです。ピーコは残りました。小鳥は食べる量が少ないので、初めから競技の対象にはなっていなかったのです。
若虎の王様が森を去って行くとき、ピーコはいつまでもいつまでも見送りました。でも王様は一度も振り返りませんでした。
森を出て行ったものの、それからの生活は、それはもうさまざまでした。でも大方のものは新しい世界で、なんとか自分が食べていけるだけの食料を得ることが出来ました。なんといっても元気なものたちだったのですから。
でも運が悪くて、ひもじい思いをして遂には死んでいかねばならないものもありました。でもそういうものたちであっても、決して自分が生まれ育った森に戻ろうと考えるものはありませんでした。
仮に戻ってもヨソモノということで受け入れてはもらえないのですから。森のあの夜の送別会にはそういう意味があったのです。
それから何年も過ぎていきました。飢饉は中々収まりそうもありませんでした。かつて森の王様だった虎は、この間世界を旅して色々な経験をしました。この虎にとって飢饉はなんの関係もないことでした。
今までやっていた王様の仕事の半分の仕事で、自分が食べていけるだけの食料を得ることが出来たのですから。
でも異国での一人暮らしが、かつての若虎をすっかり老け込ませていました。いよいよ最期が近いことを知った虎は以前の自分の森に帰ることにしました。
でも帰るといっても、その森で昔の仲間と一緒に生活をしようと思ったわけではないのです。その森で死んでいこうと思ったのです。
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