ルリエは夢を見ていた。つやつやとした緑色の光をきらめかせて舞うホタルを追っていくうちに、深い流れの中へ落ちてしまったのだ。

水泳ならクロールで五十メートルは泳げるはずなのに、いくら手足をばたつかせても体がどんどん水底に沈んでいってしまう。

水の上から、ポチが激しく吠えている。仙吉と美千代が、心配そうな顔で見つめている。

「おじいちゃん、おばあちゃん、ポチ、苦しい。息ができないの。早く助けて!」

ルリエは、水の中で必死に叫んでいた……。

「先生、女の子の意識が戻り始めました。何か言っています」

「よろしい、そのまま酸素を切らないように」

白髪頭の医師はルリエのベッドまで来ると、看護師からカルテを受け取って目を通した。

「うん、脈も血圧もほぼ正常に戻ってきたな。マスクもつけずに外で倒れていたというのに、たいした生命力だ。ところで、保安警察が、なぜあんなところで倒れていたのか、興味を持っている。ここだけの話だがな、マヤタの回し者かもしれないというのだ」

「まさか、こんな女の子が……」

ブロンドの看護師は、驚いた顔で医師を見た。

「いや、最近は酸素不足が深刻でな。地下水を横取りしたり、貯蔵庫からボンベをくすねたりする犯罪が増えているそうだよ。とにかく油断は禁物だ。人間、追い詰められると何を仕出かすかわからんからな。この子の意識が回復したら、すぐに知らせてくれ」

医師はルリエのカルテを看護師に返すと、腕組みをして病室を出ていった。