子どもがいなかったのが幸いだったのか。子どもがいたらスムーズに離婚できなかったのか。子どもを鎹(かすがい)にするなんてひどい考え方だ。子どもは減り離婚は増える。この国の男たちが思考と行動を根本的に改めないかぎり、少子化大臣がどんなに金切り声を上げても何も変わらない。

しかし、一番効いたのは母の涙混じりの言葉だった。離婚について母には事後報告の形となった。

「家族に何の相談もなしに離婚するなんてありえません。そんなささいなことが別れる理由になるものなの? ああ、なんて罰当たりなことをしてくれたの」母が元配偶者の両親のことをあそこまで気づかっているとは思ってもみなかった。

結婚は家と家の関係の上に成り立つものだ、と考えるのが父母の世代だった。わたしたちの世代は封建社会の論理(ロジック)によって、まだまだ縛られていた。

結婚より離婚の方が人と人の間に得体の知れないさざ波が立つ。母の繰り言から親世代が気にしてやまない「世間体」とは何なのか、その正体がだんだん見えてきた。

とりわけ妻の側が切り出した離婚の場合、その因果応報によって引き起こされる禍は子々孫々にまで及ぶという。

嫁は子を産んで育て、死んだら先祖と義父母と夫といっしょの墓に入る。先祖代々の墓を守ることが家が家であることの存在証明なのだ。

「本当に申し訳ないことをした」母は仏壇の前で頭を下げ合掌し念仏を繰り返した。

 

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