「今有希はどこにいるのでしょう?」

「自宅にいます。有希さんは在宅捜査ということになっております」

「在宅捜査ですか? よく分かりませんが、会ってもいいんですか」

「ええ、大丈夫です。有希さんも直接お話しすることを望んでおります」

「本当ですか?」

予想外の内容に気持ちが緩み、少し話しやすくなった。

「あの、教えてください。なぜ弁護士さんを通してのお話なのでしょう?」

「今件は刑事事件です。加害者が被害者に自由に接することで支障をきたすことがあり得ます。そのような可能性が低いということで在宅捜査になっているのですが、今岡さんのように会いたいと言っていただける方ばかりではございません。

無理やり接触すると次の事件を呼ぶ恐れがあります。業務的であることに不快な思いをさせて申し訳ありませんが、必要な手順であることを理解していただければと思います」

やはり分からないことは聞いてみるものだ。確かに加害者の顔を見たくない被害者だって多いはずだ。俺の思考は俺の仮定によって成しえるものだと理解した。

「分かりました、ありがとうございます。明日学校が終わった後、えーと、17時にいつもの喫茶店で待っていると伝えてもらっていいですか? もちろん香原弁護士さんが一緒に来ていただいても構いません」

「承知いたしました。誠にありがとうございます」深々と頭を下げられた。

いわし雲を彩る夕焼けに向かって、俺は胸を張る。今後の有希との関係を左右する重要な時間だと分かっていたから緊張していた。しかし、はっきりと自分の意思を告げられた。