やがて、車は芝生にいろいろな花が咲き乱れる植え込みに囲まれた小奇麗な家の前で止まる。カーター夫人の家である。数年間文通をして聞き覚えのある住所にこうして本当に家があり、文通相手のカーター夫人が住んでいるという事実が当たり前のはずなのに一種夢の様な不思議さを感じた。

日本の家と比べればやはりかなり余裕のある大きな家で、レンガ色の壁に白い縁取りの窓。濃い灰色の屋根から庇が突き出して、窓の外にちょっとしたバルコニーを作っている。その庇も白塗りの円柱で支えられて、全体的に調和の取れた落ち着いたセンスの良い家である。屋根からこれも白塗りの四角い煙突が飛び出しているのも、いいアクセントになっていて感じがいい。

促されて中に入ると、「長旅で疲れたでしょう。お風呂に入って少し昼寝をしたらどう?」と勧められて、早速長旅の垢を落とす。さすがに疲れていると見え、与えられた寝室でたちまちぐっすり寝てしまった。

翌日、朝食を取っていると、「ハル、日本からのお客様はとても珍しいので、新聞社に連絡しておいたの。これから記者がインタビューに来たいっていうんだけど、構わない?」とカーター夫人。ちょっと驚いたが、これも日米親善と思い、「ええ、いいですよ」と自分。カーター夫人は早速記者に連絡をし、1―2時間ほどの内に30代くらいの白人女性の記者がやってきた。

天気のいい日だったので、芝生の上にテーブルと椅子をセットして、紅茶を飲みながらのインタビュー。

「アメリカについてどう思う?」

「日本人は竹と紙でできた家に住んでいるっていうのは本当?」

「着物はとっても綺麗だけれど、生活しにくそうね」などなど、

日本に関する無邪気な質問やアメリカの印象などに関する質問が矢継ぎ早に飛んでくる。

日本の事については本当に情報がなくほとんど知らないようなので、一つ一つに真面目に答えたつもりなのだが、翌日の新聞を見て驚いた。何と、端っこではあるが、堂々と一面にニクソン大統領の大きな写真と記事の隣に自分の写真とインタビューの記事が出ている。

それ程言葉に不自由なく答えたつもりなのに記事によると、「この若い日本からのお客さまの英語はちょっと分かりにくいが、そのきらきらと輝く瞳がそのギャップを埋めるに十分である……」と書いてある。これにはちょっとプライドが傷ついた。

 

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