十四、

さらに、我の神は、語をついで、

「霊体は、永遠で、不滅なのですが、転生てんしょう(生まれ変わり)は、しています。この転生をつかさどる神が、根源(こんげん)の神の業(わざ)といえるでしょう」

貴の神は、わだかまりの塊(かたまり)が、少しずつ、溶けるのを感じながら、我の神のつぎの話を、待った。

「まえおきが、長くなりましたが、天地に身を隠すとは、天地に全身全霊を隠すことです」

と、再び、話しだされた。

「ですから、人間には、格の高い霊体がみえないのと、同じように、貴の神・我の神(霊体)の二神からは、格の高い根源の神(根源の霊体)はみえません。それゆえ、この国は、何もみえません」

我の神の説明の最後は、素っ気ない。

伊弉諾の尊の国(国生み後)、そして、双つ神の国(国生み前)から、根源の山々はみえたのに!  なぜ、ここでは、みえないのか!?と自問自答をしかけていた貴の神に、我の神が答えるように、申された。

十五、

我の神の声は、これまでとはちがって、少し、寂しげである。

「事物の根源の神より格の高い立場の神からは、事物の根源の神はみえるのです。

格の高い立場の神とは、別格の天つ神と申され、さきにお示しした、天上の五柱の神々のことです」

その声は、別離が近いことをにおわせている。だが、一気に、話を進められた。

「そのなかの天地生成の神の一柱で、天上界をつかさどる根源の神・あめのとこたちの神にお願いして、霊描れいびょう(神の描くもの)していただいたのが、あの山々です。別格の天つ神(天上の神々)から、国生み・神生みを命令された伊弉諾の尊には、たとえていえば、天上の神々は、親にあたります。

それゆえに、特別に、貴の神のために、天上界の根源をつかさどる、あめのとこたちの神にお願いして、霊描していただいたというわけです。霊描をお願いしたのは、天上界に貴の神をお召しだされた、先祖にあめのみなかぬしの神、子孫に天照大御神を、いただき遊ばす神、すなわち、伊弉諾の尊であったのです」

この話を聞いた貴の神の感激は、いかばかりであっただろうか。と同時に、今までみえなかった神々の山々が、稜線も鮮やかに、遠近の配置もみごとな山並みをあらわしたのである。貴の神は、思わず、正座して、山並みを拝した。

 

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