第1章 保険診療はベストな医療ではないという問題
日本の保険制度と米国の専門医制度
日本では世界に冠たる保険制度が整備されていて、困った時に安価な負担金で医療が受けられるという素晴らしい制度があります。私はこれを否定するつもりはありませし私も医者にかかる時は保険診療で受けます。困った時にとても素晴らしいシステムだと思います。
しかし、私と私の家族が歯科医にかかる時は保険診療にはためらいがあり絶対に保険の治療は受けません。何故ならば、以下に示すように色々なトラブルが発生するからです。
私が日本の歯科医師から保険診療を受けない理由は日本の保険制度の仕組みにあります。日本の健康保険では国が決めている材料、価格、時間、治療方法等医学的にもっと良い治療法がありながらも保険医としてあきらめてやらざるを得ないことが存在します。
保険の規則に沿って治療を組み立てなければならないので色々な矛盾が生じ、時には患者さんに害を及ぼすことも多々あります。国のシステムには限界がありすべての人にとって最善ということはあり得ません。
歯科医療の社会性を考慮すれば弱い立場の方は救済し保護しなければならないのは当然ですべての人は平等に医療を受ける権利があります。しかしながら、すべての人が同じですべての歯科医が同じというまるで金太郎飴のような保険診療には疑問を感じます。
保険診療には弱者救済の意味合いが強く万能なシステムではありませんが、もう少し自由な選択肢があってよいと思います。
そして、この本は自由診療を受けることによって、患者さん利益につながるその選択肢を知ってもらいたいために書いたつもりです。
医療は絶対にベストな医療を施すべきだし、ヒポクラテスの誓いにもあるように医師は「能力と判断の限り、患者の利益となる養生法をとり、悪くて有害な方法を決してとらない」としております。
それでは「保険診療に限界があるなら、自由診療を選べば質の高い治療が受けられるのでは」と思われるかも知れません。確かに理論上はその通りですが、現実にはそう単純ではありません。
というのも、日本における歯科医療の教育体制や技術レベルは、世界の最先端、米国の歯科専門医などと比べるとまだ十分に追いついていない部分があるのです。
もちろん日本国内にも、保険診療の枠の中でも高い志を持ち、素晴らしい治療を提供している先生はおられます。ですが、私の元に来られる患者さんの多くは過去に受けた治療で歯が壊されてしまったという深刻な問題を抱えておられます。
しかも、その中には自由診療を受けていたにもかかわらず適切な意識や技術に基づかない治療をされたケースも多く見受けられます。つまり、「自由診療=安心・高品質」というわけでなく、医療者側の知識と技術差が大きく影響しているという現実があるのです。