【前回の記事を読む】翌日、遺体の父と対面した——報われぬ献身と、死後も消えぬ親子のわだかまり
1.神の創造の奥義
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次に、私の住んでいる家での話。11年ほど妻の両親と同居していたのであるが義父が亡くなった時のことだ。世話になったと何がしかの金銭を私達夫婦に遺してくれた。
するとそれまでろくに顔も見せなかった義父の娘の一人が現れて、義父の遺してくれた金銭の一部を自分によこすようにと要求したのだ。義父は生前、その娘にはもう十分金銭をやってあるし、自分が死んでも金のことで問題を起こさないようにと伝えてあったそうだ。
しかし金が目の前にあるとそんなことはすっかり忘れてしまうらしい。一日に10回も20回も電話をかけてきて金をよこせと要求を繰返す。義母が困り果てていたので仕方なく一部をその娘に渡すことにして、銀行口座を訊いて振り込もうとした時のことだ。
銀行ATMの画面の何処にもその娘の指定した銀行の支店もないし、当然口座も存在しなかったのだ。結局送金が出来なかったので違う銀行口座を訊いて送金をやり直すことになった。何とも不思議なことであった。これは私達が送金しなくて済むように、義父がATMを使えなくしてくれたものと考えられるのだ。
またこんなこともあった。義父が生前好んで乗っていた車を業者に売って処分しようとした時のこと、業者が引き取りに来てもなぜかギアが入らずにどうやっても車庫から出せなかったのだ。その直前に車検を終えたばかりで状態が悪いわけではなかったので実に不思議だった。
結局車庫から出せないので業者がレッカー車を使って移動させ、レッカー車代を請求されることになってしまった。これは、その車に愛着のあった義父が持っていかれないようにギアが入らないようにしたからに違いないと感じたものだった。
さらにこんなことも。妻の両親と同居していた時に、風呂場を改装して両親にも使ってもらっていた。義父が亡くなって暫らく経った夜中のこと、誰もいない筈の風呂場からお湯の流れる音や入浴している音が聞こえてきたのだ。勿論義母が入っていたのではない。
これはその風呂が好きだった義父が入浴していたのに違いない。それにしてもリアルな湯音であった。
また暫らくの間、義父は毎夜義母の前に現れたそうだ。いつもの服装でいつもの椅子に座って「今何時だ?」と訊き、義母が答えないでいるとす~っと天井に上がっていったのだそうだ。