【前回の記事を読む】ある男に憑依した宇宙からの脱獄者。恋人や妻と死別する運命を繰り返す彼は、憑依した男の愛人を虜にしてしまい…
第二章 愛人
鳥飼は銀座に鰻を食べに来たのだという。鳥飼は単身赴任の気楽さと不自由さから、時々銀座に一人で食事に来ることを親しくなってから知った。
職場から離れていることもあり、亜矢は鳥飼に誘われるまま老舗の鰻屋に入った。ずっと緊張していて正直味は覚えていない。家族のことや、趣味のこと、仕事に対する抱負など、鳥飼に聞かれるままに答えた。
帰りに利用する電車がJR東海道線と京急線で異なるため銀座で別れた。別れ際に携帯電話の番号とメルアドを交換した。暫くして、誕生日に鳥飼からお祝いのメールが亜矢に届いた。そして、また食事に誘われた。
二人だけで食事に行くことに少し抵抗があったが、支店長からの誘いを断る勇気もなく、鳥飼に好意を持っていたこともあってOKした。
お酒の勢いで話が盛り上がり、食事が終わってからカラオケに行くことになった。そこで亜矢はいきなり鳥飼に抱き締められキスされた。
そして、カラオケを早々に切り上げて近くのラブホテルに行き、二人は男と女の関係になった。亜矢にとって鳥飼は初めての男だった。何故そこまで行ってしまったのか、自分でも分からなかった。
それから、亜矢は鳥飼と月に数回会うようになった。初めの頃、正直言ってセックスが好きではなかったが、数ヶ月すると快感になった。
しかし、慣れてくると今度は物足りなさを感じた。「年齢差があり過ぎるからかな」と思ったりもした。
ところが、鳥飼が病院から帰ってくると全く別人になっていた。とにかくセックスが激しい。それに時間も長い。亜矢は初めて絶頂で意識を失った。
今では二、三日会わないと気が狂いそうになり、亜矢の方からメールをするようになった。鳥飼が変わったのはセックスだけではない。食べるもの、着るもの、話し方も変わった。一言で言うならカッコよくなった。