トミー・ムーア
ビートルズは、プロになるためのオーディションを受けようとしていましたが、ドラマーがいませんでした。そこで、初代マネージャーのアラン・ウィリアムズが見つけてきたのがトミー・ムーアです。
彼は、工場でフォークリフトの運転手として勤務するかたわら、パートタイムでプロのジャズドラマーとして働いていました。プロとしてのステージ経験はそれなりに積んでいたので、その当時の彼の腕は、ビートルズのメンバーより上でした。ビートルズは、ドラマーがいないため、そもそも人前で演奏すること自体ができず、バンドとしての存続の危機にさえありました。
ただ、ムーアをメンバーに加えるのは、そう簡単なことではありませんでした。というのも、彼は、工場で地道に働いていた労働者で、あくまでもドラマーは副業にすぎなかったのです。
しかも、年齢もビートルズよりずっと年上の29歳で、いまさら、青二才の学生バンドと組んでオーディションを受けようなどという気はなかったのです。どうにかこうにかウィリアムズが彼を説得して、何とかオーディションを受けることを引き受けてくれました。
こうして、彼は、ビートルズがプロとなって最初のドラマーとなり、ツアーやライヴに出演しました。音源が残されていないので確認はできないのですが、腕は、かなりなものだったようです。
ジョージが後に「我々が出会った中で最高のドラマーだった」と述懐したのです。それを聞いてリンゴは、とても嫉妬しました。
しかし、ムーアは、ある日突然脱退してしまいました。「いつまでも子どものお遊びに付き合っていられない」という理由です。無理もないですね。仮にローカルバンドとして売れたとしても、それで一生食える保証はありません。それなら地道に働いた方がいいと判断したのです。
後年、彼は、脱退したことを後悔していると語りました。まさか、彼らがあんなスーパースターになるなんて予想もしなかったのです。
【イチオシ記事】「私を抱いて。貴方に抱かれたいの」自分でも予想していなかった事を口にした。彼は私の手を引っ張って、ベッドルームへ…