【前回記事を読む】1960年、地元紙に「The Beatles」の名が掲載される。写真もないベタ記事から彼らの時代が始まった。

第1章 ビートルズがビートルズになる前 Before The Beatles became The Beatles

②「The Beatles」というバンド名

THE BEATLESのロゴ

THE BEATLESのロゴは、「ドロップ−T」と呼ばれています。Tの縦棒が下に長く伸びて、落っこちているように見えるのでこう呼ばれています。ちょっとしたアクセントですが、これもなかなかシャレています。

意外なことにこれは、ビートルズではなく、ドラム専門店の店主であるアイヴァー・アービターが考えたのです。

リンゴがドラムキットを購入した時に、同行したマネージャーのブライアン・エプスタインがバスドラム(一番大きなドラム)の客席側から見えるスキンに、大きく目立つようにビートルズのロゴを入れてくれと依頼しました。

彼は、2種類のロゴの下書きを渡し、「BEAT」の文字を強調してくれと注文を付けました。

アービターは、Bの字を拡大し、Tの縦棒を下に長く伸ばした文字で「beat」という言葉を強調しました。残りの文字は左右対称にして高さを同じに合わせました。

これは、少しでもバンド名を目立たせてPRしようとするブライアンの戦略でした。その効果は抜群で、彼らが演奏している姿を見た人は、彼らのことを知らなくても、バンド名がビートルズだとすぐに分かったのです。リンゴが新しいドラムキットを購入するたびに少しずつデザインは変わりましたが、基本的には最初のものとそう大きくは変わりませんでした。

 ③ドラマーを探せ!

「悩みの種」だったドラマー

ビートルズにとってドラマーは「悩みの種」でした。アマチュア時代からドラマーがなかなか見つからず、プロになってからもメンバーとして定着しなかったのです。

その理由はいろいろありますが、一つには彼らが労働者階級出身で家が貧しかったことです。ドラムキットは当時で20ポンド、現在の貨幣価値に換算すると10万円ほどでしたが、貧しい彼らにはとても手が出ませんでした。

もう一つは、ドラマーになりたがる少年たちが少なかったことです。リンゴ・スターが登場して以来、ドラマーが脚光を浴びるようになりましたが、それまではバンドの中でも一番後ろでキットで顔が見えない地味な存在でした。ロック少年たちが憧れたのは、目立つメインヴォーカルやギタリストでした。