【前回記事を読む】女の子達にもみくちゃにされ、着ていたシャツはボロボロに…スコットランドが「ビートルズの聖地」となった意外な理由
第1章 ビートルズがビートルズになる前 Before The Beatles became The Beatles
①プロデビューはロンドンでもリヴァプールでもなかった
主役を食ったビートルズ
ビートルズがロンドンから遥かに離れたスコットランドでプロデビューしたと聞くと、意外に思う読者が多いと思います。乏しいギャラで食うや食わずの過酷なツアーでしたが、街の人々は、とても温かく彼らを受け入れてくれ、初めてサインを求められ、ファンの女の子たちに追いかけられるという嬉しい体験もしました。
スコットランドは、迷っていたビートルズにプロになるという決意をさせた重要な場所です。そして、スコットランドの人々は、今でも彼らがプロデビューした聖地であることに誇りを持っています。そういう意味で意外性と重要性のあるエピソードだと思います。
リヴァプールで活動を再開
スコットランドツアーは、ビートルズのプロとしてのデビューではありましたが、それはあくまでもバックバンドとしてでした。
ですから、彼らが単独でデビューしたという意味においては、リヴァプールに帰った1960年5月30日、ジャカランダ・コーヒーバーで行われたショーが最初ということになります。
もっともこの頃、彼らは、シルヴァー・ビートルズと名乗っていました。彼らのバンド名はころころ変わっていて、ビートルズに落ち着いたのはもう少し後のことです。彼らは、マージーサイドのウィラル半島にあるネストンの町の、ヒンダートン・ロードを本拠地とするネストン女性友好協会のホールで、1960年6月2日から木曜日のナイト・ショーを6回連続で行いました。
協会に所属している女性メンバーはもちろん、そうでない女性でも、受付で1シリングを支払って午後9時までダンスすることを許可されました。本当はキャス・アンド・カサノヴァズが出演する予定でしたが、彼らがキャンセルしたので代わりにやってきたのがシルヴァー・ビートルズでした。
女の子たちは、自分たちが知っているカサノヴァズが来ず、聞いたこともないシルヴァー・ビートルズなんてバンドが来ると知って初めはガッカリしたようですが、結果的には、その方がずっとよかったんですね。