「ここまで来れば大丈夫よね……」

まさかこんな展開になるとは思っていなかったので、真由の怒りは相当なものだと思えた。だけど、私にできる事はない。長澤さんと真由の間で話し合ってもらうしか……

「亜紀、僕さ、出版社を辞めるよ」

「え?」

「こんな事までされて、居られないよ。大丈夫。実は友人が立ち上げた会社で、一緒に働かないかって誘われていたんだ。良い機会だから考えてみる」

「うん。それが良いと思う」

でも……悠希さんはそれで諦めてくれるだろうか。今日みたいな事がまた起きないとも限らない。

「ね、一緒に住まない? 悠希さんの知らない場所で」

「……そうだな。そうしよう。でも、その前にしたい事があるんだ」

「何?」

俊雄さんは鞄から、婚姻届けを取り出した。俊雄さんの方にはもう記載されている。

「結婚しよう、って言っただろ? 悠希さんに邪魔されないように、今日出しに行こう」

本当なら、こんなに忙(せわ)しく出したくなかったけど、事は一刻を争う。私も自分の部分にサインをして捺印をした。

そして私達は区役所へ出向き、婚姻届けを出して受理された。こうして私は、沢村亜紀から、園田亜紀となったのだった。

私は両親に簡単に今の状況を話して、入籍を先に済ませてしまった事を伝えると、大変だったのね、と母に泣かれた。父も、そんな女性がいるなんて信じられないと悠希さんに対して憤慨する。

とりあえず両親に納得してもらえたので、後は新居探しだ。

俊雄さんと色んな物件を見て回り、結局中古マンションを買う事にした。セキュリティのしっかりしているマンションなので、少しは安心感がある。

俊雄さんは社長に引き留められるも振り切って、出版社を辞めた。