「美代子さんは、今日のお昼にサバの焼き魚を召し上がったと聞きましたので、丁度良かったですね!」

「私、お肉大好きですから」

「そうか、美代子はフィットネスの初日だったんだね、体が動いた?」

「何しろ、初心者だから一番後ろで、皆に目立たない場所で、動きについていくだけで大変でした」

悠真が美代子の顔をじろりと見渡し「顔、艶がいいね、血行が良くなった証拠だよ。効果てきめんだね。どんな年齢層が中心なの?」

「エアロビクスの初級クラスは、二十歳から七十歳位までと幅が広いみたい。皆、格好良く動くというより、体を動かすことに興味がある人みたい。私の隣でリズムをとっていた篠田さんという方は、年は同じくらいかな。マイペースでやるのが一番、とおっしゃっていた。その方が運動した後でミストサウナに入るのが好きで、ゆったり時間を使って終わりに湯船に浸かって半日、のんびりするそうです」

「たまプラーザ近辺は、急に開けた新興住宅地で、東京辺りから引っ越してきた中高年のお金持ちが住んでるからね。ジムの客層もそうでしょう」

「そう言われれば、室内の雰囲気が垢ぬけているように思える。気のせいかな」と自分の立場がどのへんか少し戸惑って返事を返した。

悠真は、フィットネスクラブの話を聞いていて、自分も満足な体であったなら、美代子と一緒にジムでウエイトトレーニングをしていただろうと、悔しさを隠しながら、美代子の満足そうな表情を楽しんでいた。

一方で、美月にも気を使いながら悠真は「美月も時間が許せばやってもいいんだよ」

「ありがとう、でも、私は運動オンチだから」

「ジムにはいろんなメニューがあるんだよ。プールもランニングも機械もダンス も、自分に合ったものから始めればいいのだよ。ちゃんとインストラクターの若いお兄さんも付いているから、手取り足取りで教えてくれるよ。まだ家にこもる年齢じゃないから」

悠真は、普段、自分にかかりきりになっている、美月にも気を使っている素振りを見せ、二人の女性の間で微妙な雰囲気を感じ取っていた。

次回更新は12月19日(金)、19時の予定です。

 

👉『迷いながら揺れ動く女のこころ』連載記事一覧はこちら

【12/17(水)「注目の新連載」と「2025年話題作ピックアップ」がスタート】

20時配信|2025年話題作ピックアップ

『東京フェイクLove♡』

57歳主婦が踏み込んだ、都心のデザイナーズマンション302号室。待っていたのは24歳イケメンセラピスト――その出会いが日常を狂わせていく。

第1回記事 57歳で、ずっとレス夫婦だった。初めて予約したイケメンマッサージで、宣材写真の中から指名したのは、一番若くて…

 

21時配信|注目の新連載

『超能力探偵 河原賽子』

人生どん底の女性が出会ったのはタワマン最上階に住む自称“超能力探偵”河原賽子。 密室で“無数のナイフで壁に磔”にされた猟奇事件――賽子は「サイコキネシス殺人」と断言するが…。

第1回記事 「実力不足」と家庭教師をクビになった日、道で男とぶつかって眼鏡を破損。さらに顔に飛んできた紙には、信じられない悪口が…