過度(かど)な「注意」や「叱(しか)る」あるいは「怒(おこ)る」という劇薬(げきやく)だけでは、子供たちの成長は阻害(そがい)されてしまう。そこでは、今まで歩んできた自分の道の意義(いぎ)さえも失い、これから進むべき道、路頭(ろとう)にも迷うことになる。
私は、このような実体験からいつかはこの思いを「児童小説」として著(あらわ)し、小・中・高生に、そして保護者や先生方、指導者に伝えたいと思うようになった。
本書『チャンピオンへの道』の主人公である「正夫」は、読者である皆さんとは比べものにならないほど悪い環境下に育った。喘息(ぜんそく)という病による不登校(ふとうこう)・度を越えたイジメ・両親との死別など。これでは、正夫が多少の素質という潜在力(せんざいりょく)に恵まれていたとしても、絶望の淵(ふち)から這(は)い上がることは至難(しなん)の業(わざ)といえよう。
こんな時に、手を差し伸べてくれたのが「清水(しみず)の爺(じい)ちゃん」だった。正夫にとって父の、若くしての死から心に芽生(めば)えた医師になりたいという淡(あわ)い夢に、
「正夫、ヒポクラテスになるんだ。医者のチャンピオンだ」
という明確な言葉で道筋(みちすじ)をつけてくれ、無限(むげん)の愛を注(そそ)いでくれた。
それを支え励ましてくれたのが喘息の治療に当たってくださった医師や小中高の素晴らしい先生方であり、小学校の同級生の古川君だった。また、逆境(ぎゃっきょう)にあっても挫(くじ)けない生命力の逞(たくま)しさを、野草の「ワルナスビ」からも教わった。
正夫は、成長過程(せいちょうかてい)という道程(どうてい)の中で多くの人たちに出会い示唆(しさ)を受けてきた。人は、私的存在でもあるが社会的存在でもある。
一人の人間という「個」の成長は、様々な人々の繋(つな)がりの妙(みょう)の中で育(はぐく)まれる。そして、それがまた個や社会の中に還元(かんげん)されることになる。
人類は、二〇世紀二つの悲惨(ひさん)極(きわ)まる辛苦(しんく)の大戦を経ながら、いまだに地域紛争(ちいきふんそう)や民族紛争(みんぞくふんそう)を続けている。何という愚(おろ)かなことか。それでも私たちは、人類が築いてきた叡智(えいち)にこれらの解決の希望を託(たく)し、前向きに歩みを続けなければならない。
本書が、細(ささ)やかでも何らかの形で皆さんの心の琴線(きんせん)に触(ふ)れ前向きになってもらえるならば、著者(ちょしゃ)としてこんなに喜ばしいことはありません。
著者 佐藤清助
次回更新は12月17日(水)、11時の予定です。
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