雷と風

シャーシャーシャーシャー夏の陽射しを浴びたセミたちが、ひと夏の命を楽しむ大合唱をしている。太陽は全開だ。

外に出ても暑いので、翔太は特に予定もなくダラダラと夏の休日を涼しい部屋で過ごしている。

「あー暇やなぁ。久しぶりにギターでも弾くか」

翔太は親父から譲り受けたMOONのレゲエマスターを取り出し、ミュージックプレーヤーで選曲した。流れてくる曲にフレーズを重ね手首をこねくり弦を弾く。曲はTHE MODSの『TWO PUNKS』だ。

このバンドを知ったきっかけは、親父がガキの頃に聞いて刺激になったバンドだと中学の時に教えてもらい、がっつりハマったのだ。同年代の人間はほぼ知らない昭和のロックバンド。少しイキがっていた翔太にピッタリの詞が共感できた。

窓の外は真っ青な空に真っ白な入道雲。そんな外には出ず部屋の中でギターを弾く。

ロックだなぁ〜と翔太はフレットに指をスベらせた。

“ゴロゴロ! ドンドンドドドー!”突然雷の音が響いてきた。だんだんと音が近づいてくる。

「ひょっとしたら近くに落ちんじゃね?」

慌ててギターを置いて、ベッドに潜り込んだ。

「やばいよやばいよ! 雷落ちるやん」

翔太は雷が苦手だ。子供の頃遊んでいた時に、近くの電柱に雷が落ちた。ピカッと真っ白になった瞬間に、轟音(ごうおん)が響き耳をつんざいた。

もし、自分に雷が落ちていたら死んでいたんだと思ってからは、雷が怖いのだ。

ベッドの中でへそを押さえてビクビクしていると、バタバタバタと妹の咲(さき)が部屋に飛び込んできた。

「お兄ちゃん! 雷が! 雷がやって来た!!」

「わかってるって。だからへそ隠してんやろ」

「ちゃうちゃう! 雷の音が! もう一緒に来て!!」

「なんやねん雷怖いって言ってるやろ! も〜」