第四章 主従関係
しかししばらく付き合うと彼はそもそも性欲がそれほどないことが分かった。最初こそ会うたびにセックスをしていた。しかしいつしか私ばかりが求めるようになっていた。それは女として、すごく屈辱的なことだった。
さらに最悪なことに、私はそのことについても彼を何度も非難してしまった。そうなればいざ彼から求めてくる日があっても、私は彼が無理をしてセックスをしてくれているんじゃないかと思うようになってしまった。彼は私の言うことを何でも聞くのだ。
深く、深く感じながらも、私はその想いをなかなか払拭できずにいた。
忠実なしもべだが、男としては頼りないハギ。しかし私はこの共依存の関係から抜け出す勇気はなかった。むしろ何でも言うことを聞いてくれるのだから、いずれ結婚する相手にはうってつけなのではないかとすら思った。
それでも現状は常に受け身のハギをつまらなく感じて、他に刺激を与えてくれる存在を探そうと私は躍起になった。新たな出会いを求め、未経験でも手軽にできそうだという理由でバドミントンのサークル『ジョイナス』に私は入会した。
『ジョイナス』は週に一度活動している社会人バドミントンサークルで、年齢も職業も実に多種多様な人がいた。入会した目的もまた様々だった。
ただ単にバドミントンがやりたい者、運動不足解消やダイエット目的の者、友達や恋人を探しに来ている者。刺激を与えてくれる存在を見つけるのが目的の私は一番不純なのかもしれなかった。しかし動機が何であれ身体を動かすことはやはり楽しい。そして幅広い年齢の様々な職業の人と出会えたことは、私に少なからず良い影響を与えた。
彼氏に依存し過ぎていた私は、彼氏以外の男性と関わることで少し視野が広がった。彼氏だけが男じゃない。男なんて沢山いるのだ。
何人か、気になる男性ができたが、結局誰とも上手くはいかなかった。特に私が気になったのはサークルを運営するリーダーだった。しかし彼は既婚者な上、恋愛のいざこざは御免被りたいと言わんばかりに馴れ馴れしく接する私を突っぱねた。悲しきかな、彼のそういう態度が私をより一層燃え上がらせた。
反対に数ある出会いの中で、私に好意を向けてくれる男性もいた。しかし私はどうしてもそういう男性を好きにはなれなかった。
自分のことを愛してくれる人を愛せたならば、どんなに楽だろうか。追われる恋より、 追う恋ばかりをしてしまう。私の恋愛はまさに前途多難だ。
リーダーは全く相手にはしてくれないが、私はリーダーのことを考えて何度も自慰をした。時にはハギとセックスしながら、リーダーに抱かれている妄想をすることもあった。