社会の変遷とともに
ここでマルクスについても触れておかねばならないだろう。マルクスはヘーゲル左派と呼ばれ、ポストヘーゲルの思想家である。哲学者というよりは経済学者であり、革命家であった。『資本論』で知られている。
ヘーゲルとマルクスの間は50年ほどしかないが、社会は大きく変化していた。資本主義の時代が来たのである。産業革命の進行(蒸気機関、電気など)により大量生産、大量消費の時代が来たのである。しかし、そこでは貧富の大きな格差が拡大していった。
多くの工場ができ、そこで働く大量の労働者が必要となった。そのため、人が都市に集中し、スラム街を作り、そこに住むようになった。工場では分業が進み、単純労働者でも仕事が可能となったが低賃金だった。富める人は莫大な富を得る一方、貧しい人はその日の暮らしも困るような状況に至った。
これに怒ったのがマルクスである。マルクスは諸悪の根源を資本主義だと主張し、私有財産が悪の根本だとした。そして、労働者(プロレタリアート)による革命により共産主義社会を作らなければならないと論じた。国家も資本家の味方なので廃止する必要があると訴えた。
ここから社会主義者と、自由主義者あるいは国家主義者の間の対立が生じ、これが現在まで続いている左翼と右翼の対立の構図の源である。さらに第一次大戦後にロシア帝国が崩壊し、ソビエトの誕生により共産主義国家が生まれたことからマルクス主義は20世紀のインテリの希望の光となったのである。