人種のるつぼニューヨーク。ダンサーも白人、黒人、黄色人種等様々だった。その中に、レオタードを着て巧みな身体捌きで、性的な魅力を表現している一人の日本人ダンサーがいた。名前は霧生美咲(きりゅうみさき)。

腕と足の動きのバランスが良く、クラシックバレエの要素も取り入れた動きと調和のとれた構成で見るものを惹きつけるパフォーマンス力を持っている。他の数人のダンサーも美咲のダンスに注目していた。練習も一段落し、美咲は数人のダンサーと談笑している。

「ねえ? 美咲。練習も終わったことだし、私達に少し付き合わない? それとも何か予定でも入っている?」

リサがミネラルウォーターのボトルを持ちながら聞いた。

美咲は薄すら汗をかいた表情でリサを見た。

「一緒に食事にでも行く? もう最後だから、無理強いはしないけど」

リサが誘う。

用事があるから、と美咲は断った。

「そう。私はこれからリバー・カフェでマンハッタンを一望しながらディナーとしようかしら」

リサがミネラルウォーターをしまいながら言う。

「その後は、反りあがった硬いマツタケを両手で掴みそれを口に含んで食らうってことね?」

誰かがそう言うと笑う声が聞こえてきた。