{試験期間(深田宏之)}
暑く熱い夏が過ぎて秋となり、祭りの後のような虚脱感が続きつつ、猛練習をしなくてもよくなり、どこかホッとしつつ、高校生活をエンジョイしていた3人だが、恒例の定期試験1週間前となった。
放課後に部室で長居する生徒が見当たらなくなった中、宏之は、学校から自転車で10分足らずに自宅があることもあり、余裕をかまして、1枚の方眼紙に定規を当てて線を引いて悦に入っていた。
西尾が顔を出して
「深田、部室で何やってんの? 目の前の試練から逃げようとしているな(笑)」
と言って去っていき、しばらくして白川が
「欲張って第2外国語なんて選択するんじゃなかったわ。アウフビーダーゼーエン」
と嘆きながら帰宅していった。
「キャプテンたる者、船長のように、最後まで部室と共にみたいな気持ちが僕にはある」
と2人には言ったが、どうせ家に帰ってもお袋が「試験前は大変ね。はい、お茶」みたいにして「勉強してるか確認」をしてプレッシャーをかけてくるので、ここの方が気楽だ。
それでも、試験前の大事な時間の有効活用で、恒例の「試験1週間前勉強計画」を完成させた。
まあ、前回と代わり映えはしないけど、継続は力なりで、「帰宅してから即勉強開始(宿題含)→夕食&食休みで1時間→勉強2時間→風呂→勉強(暗記)→就寝」てな感じで今回も行こう。
ポイントは2つで、一つ目は「風呂に入ったら、TVを少し見てリラックス」と思ったが、見出すと、ついついチャンネルを回してだらだら見てしまう怖れがあるので、TVは禁止。
二つ目はこの計画の危ないところだが、「就寝前には深夜放送を聞かない」ところで、ラジオを聞き出すとすぐに30分や1時間は過ぎるので注意しなくちゃいけない。
普段、聞くのは、僕は「セイ! ヤング」、白川は「パックインミュージック」、西尾は「オールナイトニッポン」という風に分かれていて、前の日(その日?)とかの面白い投稿やあり得ない展開を披露しあったりすることもあるけど、2人と「試験前はお預け」と停戦協定を結んだので、僕も我慢しよう。
大好きなコミックを読むのもしばらくは封印。
よし、この計画で完璧。家に戻って頑張るぞ!