良は、荷物を置くとリュックに近寄りブリーフケースの中の鍵の部分を触って信号が出るようにセットした。

「此れで少し様子を見ましょう!」と言って持って来た袋から美味しそうな様々なパンを出した。浩は思わず、「美味しそうですね!」と言って立ち上がり、台所へ行ってケトルで湯を沸かし始め、傍のテーブルへティーカップとティーパックを並べた。

「美味しい処で買いましたから凄く美味しいと思いますよ! 食べて少しゆっくりしましょう。相手が来るまで未だ時間は十分有ります」

良はそう言って部屋の中をぐるりと見廻した。

「中はすっきりしていますね!」

と言うと浩が

「出入口の仕掛けの為に荷物を入り口付近に集めましたので……」

と笑って答えた。

余は待ち疲れながらスマホを触っていると「ピン!」という音がした。直ぐブリーフケースの位置を示す画面をアップさせると五反田の方に印が出ていた。

余はがっかりしながらしっかり見ていたつもりだったのだが……と思い、直ぐ会計を済ませトイレに寄ってから一階へ急いだ。日本橋四井タワーのエントランスへ走り出て、直ぐタクシーを捕まえ、五反田へ向かった。余はタクシーの中で思い返していた。

前のカウンターの女性が余りにもスタイルが良かったのでつい見とれて、何度もロビーから目を外したのが失敗だったな! と思っていた。余は元来の女好きで、前のプロジェクトでも女で失敗した苦い経験が有った。

五反田では良が持参したバッグからスタンガンを取り出し、扱い方を浩へ丁寧に説明し、ベルトの後ろ側にスタンガンホルダーを付け、スタンガンを取り出し易いように何度か試すように指示した。

浩は初めてスタンガンを見てびっくりしたが興味深く、指示通りスタンガンホルダーを腰の後ろへ付けスタンガンを差し込んだ。

スタンガンは、丁度握り手の部分がホルダーより少し飛び出していたので握り易く、直ぐ引っ張り出せた。

浩は何度も繰り返してその度にスタンガンホルダーの位置を少しずつ変えて、初めてのスタンガンを意識せず取り出せるよう工夫し、万が一の為、何度も練習した。

 

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