【前回の記事を読む】調達の基本から実務の流れまで! 直接材・間接資材・外部サービス・設備まで広くカバーする調達の役割とその効果とは

第1章 調達の意義と効果

3 調達の効果

調達の削減効果は会社にとって大きなインパクトがあり、経営にとっても最も関心の高い項目の1つです。その理由は、調達活動によるコスト削減額は、損益計算書(PL)上の営業利益に直接貢献し、会社の利益創出に寄与できるからです。(図表1-4 参照)

調達は、大きく分けてスポット(1回のみの購入)と継続(継続購入)に分かれます。

スポット購入の場合は、初回見積もりとの比較、市場価格との比較、数社平均提案価格での算出方法を適正に選択し、購入時のコスト削減額を計算します。(例:PC、携帯電話、実験機器、事務用品等)

一方、継続購入の場合は、基準年度を決めて基準年度購入時の単価からの削減分を毎年、累積的に算出します。(例:直接材、業務委託等)この様に継続的に購入する場合は、削減効果も数年にわたり累積的な削減額となり、よりインパクトが大きくなります。

従いまして、サプライヤーとの継続的で持続的な関係を構築し、将来にわたって双方で品質確保・コスト削減・安定供給(QCD)を実現することはまさに真の意味でのウィンウィンの関係構築といえるでしょう。

更に、調達の効果は、規模が拡大すればバイングパワーが強化されるため、更なるコスト削減が可能となり、企業同士の合併・買収(M&A)、グローバル展開時には、調達によるシナジー効果は、 真っ先に求められるものです。

また、会社の業績が悪化し、内部の人件費削減に手を付けなければいけない時でも、まずは、外部の調達コスト(支出)をいかに抑制し、必要最低限のもののみを購入することにより、適正な外部支出による筋肉質な会社に改造する上で、調達の役割はとても重要です。

用語解説

QCD…Quality(品質確保)、Cost(コスト削減)、Delivery(安定供給)の頭文字を並べたもので、この3つは、製造業において欠かすことの出来ない重要な要素。近年では、更にこれらの3要素に加えてS(Sustainability:環境、労働と人権、倫理、持続可能な調達等)の要素も重要。

ウィンウィンの関係構築…取引する際に、売り手と買い手の双方に利益をもたらす関係を構築すること。

バイングパワー…購入先が購入量を最大限まとめて交渉することにより、売主に対して有利な価格(ボリュームディスカウント)を引き出すこと。