はじめに
読者の皆様へ
昨今、ビジネスに関する書籍では、経営管理、会計・財務、人事、法務・CSR 等に関する本がどこにでもあふれていますが、「調達」に関するビジネス書がほとんどないことに気づきました。 皆様は、「調達」というとどんなものを思い浮かべますか。
すぐに思い浮かぶのは、原材料・商品、パソコン・事務用品等でしょうか。そして少し詳しい方なら、物流・エネルギー関連、建物・設備・機器等を想像されるでしょうか。
これに対してなかなか思い浮かばないのは、外部への業務委託(人材派遣、IT システム導入・メンテナンス、研究・開発・製造・販売委託等)や、出張時の手配(旅行代理店、ホテル、航空会社等)かもしれません。実は、この様なモノ・サービス全てが「調達」に含まれます。
「調達」とは、仕事をする上でも、生活する上でも必要不可欠なことであり、いかに上手に「調達」するかは、生きていく上でとても重要で基礎的な要素でもあるのです。
そこで私は、出来るだけ多くの皆様に「調達」を理解し役立てて頂きたいとの思いから、この度、企業にて調達のバイヤーとして 20 年以上積んだ経験を活かして「調達の最適解」というタイトルの本を執筆することといたしました。
私は、これまでにバイヤーとして直接材、間接資材、アウトソーシングサービス、設備等の様々で広範な調達経験を積んできました。
また、マネジメント面においては、調達の業務改革・経営統合推進およびグローバル調達のリーダーとしての役割も経験してきました。
本書は、私の具体的な実務経験をもとに、調達組織のあり方と調達人材の理想像について出来るだけ詳細に分かりやすく記載したものです。
調達は、企業のコーポレート部門として唯一、直接利益に貢献できる重要な機能であり、企業の競争力を向上させるためには、最適な調達組織・人的資本が不可欠です。
本書では、その様なニーズに応じるために、私の実務体験と知識を活かして読者の皆様に実際に役に立つ情報を提供します。
最初に第1~2章で、そもそもの調達の定義と調達組織の過去 50 年間の変遷を振り返ります。
次に、私が数多く経験した調達戦略の策定・実行に関して、成功事例・失敗事例を交えながら紹介していきます。