森の卒業式
小さい皆さん、こんにちは。
今日は、森の卒業式のお話をします。
毎年夏の初めに開かれる森の学校は、夏の終わりに卒業式を迎えます。まだ小さくてヨチヨチ歩きだった森の動物たちも、すっかり日に焼けてたくましくなっています。
森の学校の校長先生のふくろうさんは、集まってきたこどもたちに最後のお話をします。
「ここへやって来たときは小さかった皆さんも、今ではすっかり大きくなりました。もう大丈夫です。明日からは立派に自分一人で生きていくことが出来るでしょう。
ところで皆さんは、一番初めに森の学校に来たとき私が話したことを覚えていますか。皆さんが努力すれば、大人になったときになんにでもなっていられるというお話です。皆さんはそれを聞いてちょっぴり幸せになったでしょう。でも本当のことを言うと、それは真実ではありません。カメの子はカメになり、モグラの子はモグラになります。
ではなんで私がそのようなことを言ったかといえば、それは初めから今のようになっていたわけではないからです。初めは、私が以前に話した通りだったのです。
ところが鳥やライオンなど努力して人気者になった動物の親たちが、自分のこどもにもそうさせたくて、身体をいじくって今のようにしてしまったのです。そしてあろうことか他の動物たちの身体もいじってしまったのです。本当に身体を今のように作ってしまうと、後のこどもたちは努力のいかんにかかわらず、親のあとを継ぐことになります。
これはでも、すごく不公平なことなのです。ですから皆さんは、今すぐにというわけにはいかないかもしれないけれど、その身体を元に戻さなければなりません。同じ動物に生まれて、努力のいかんにかかわらず、親と同じになるなんて断じて認めてはなりません。では皆さんの健康と楽しい生活を祈ります」
こどもたちはそれを聞いて、ちょっとだけ憤慨した心を持って家に帰って行きます。