七時をすぎると、少しずつ暗くなってきた。空が、みず色から藍色に変わり始めている。

そのうち辺りが急にひっそりし、ひんやりした風が吹いてきた。西の空が茜色に染まり、ヒグラシの鳴き声が寂しげに聞こえる。足元が、だんだん覚束なくなってくる。

すず子が来たら、ここで泳げばいいと目星をつけておいた淀みにようやく着いた。

「ポチ、わたしのせいで、すっかり遅くなっちゃったね。おじいちゃんやおばあちゃん、きっと心配してるね。あと少しだから頑張ろう」

そうポチに話しかけたとき、向こうの岩の近くで、緑色の光がふわっと舞い上がった。

「ポチ、見て!」

ルリエは目の色を変えた。緑色の光の粒は木の葉にとまって、つやつやと輝いている。

「うわあ、きれい! とうとう出たんだ」

嬉しくて、ホタルのいる方へ近づいていった。ホタルはまたふわっと舞い上がると、ゆっくりと下流の方へ飛んでいく。

ルリエはもう夢中になって、ホタルのあとを追いかけた。

水の中で、足がすべったような気がしたのは覚えている。だが、それからどうなったのかわからない。遠くの方で、ポチがしきりに吠えているような気がした。

暗いトンネルみたいなところへ落ちていくなと思った瞬間、気を失ってしまった……。

 

👉『エメラルド国物語』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】突然死した妻の相手は誰だった?...自分の不倫はさておき、弔問客の中からやましい男を探し出す。

【注目記事】「俺をおいて逝くな…」厚い扉の先にいた妻は無数の管に繋がれていた…。