七時をすぎると、少しずつ暗くなってきた。空が、みず色から藍色に変わり始めている。
そのうち辺りが急にひっそりし、ひんやりした風が吹いてきた。西の空が茜色に染まり、ヒグラシの鳴き声が寂しげに聞こえる。足元が、だんだん覚束なくなってくる。
すず子が来たら、ここで泳げばいいと目星をつけておいた淀みにようやく着いた。
「ポチ、わたしのせいで、すっかり遅くなっちゃったね。おじいちゃんやおばあちゃん、きっと心配してるね。あと少しだから頑張ろう」
そうポチに話しかけたとき、向こうの岩の近くで、緑色の光がふわっと舞い上がった。
「ポチ、見て!」
ルリエは目の色を変えた。緑色の光の粒は木の葉にとまって、つやつやと輝いている。
「うわあ、きれい! とうとう出たんだ」
嬉しくて、ホタルのいる方へ近づいていった。ホタルはまたふわっと舞い上がると、ゆっくりと下流の方へ飛んでいく。
ルリエはもう夢中になって、ホタルのあとを追いかけた。
水の中で、足がすべったような気がしたのは覚えている。だが、それからどうなったのかわからない。遠くの方で、ポチがしきりに吠えているような気がした。
暗いトンネルみたいなところへ落ちていくなと思った瞬間、気を失ってしまった……。