とはいえ、日本の報道や教育、著作では再エネの最新状況が分からないこともある。

例えば、スイスのバーゼル・シュタット準州ではすでに100%再エネ電源供給が達成された。その上で、次に脱炭素化を目指しガス網の完全運転停止を目標として動き出した4=第1章5参照。この州の再エネの最大の電源は水力発電である。このような報道はされているのだろうか。

例えば、放送大学の「改定新版 エネルギーと社会’19」第9回「再生可能エネルギー」の講座では「再エネは大規模な小水力発電を含めても10%も満たさない5」。これに反して、現状は24年(歴年)の日本の電源構成は26.7%6と4分の1を超えている。

小水力発電の先進事例を求め、23年にオーストリアに視察に行った。そうした内外で直接取材した伝聞も本稿では多く取り入れた。

以上のように、本稿は、日本独自の再エネ普及案を求め、あまり注目されてこなかった水力発電の良い面と悪い面を含め可能性を探っていく。

なお、クレジット記載のない写真、イラスト、図版は、著者が作成、撮影した。また、脚注のない発言は、著者がインタビューした内容である。


1 2024年7月15日付『神奈川新聞』「温室効果ガス 新目標60~ 66% 政府さらなる上積み焦点」の記事の解説

2 田中信一郎著『信州はエネルギーシフトする―環境先進国・ドイツをめざす長野県』(築地書館、2018.1.12)のタイトルから引用

3 ジェイムズ・ハンセン著 枝廣淳子監修・中小路佳代子訳『地球温暖化との闘い すべては未来の子どもたちのために』(日経BP社、2012.11.26)

4 2024年6月28日開催の講演会「バーゼル・シュタット準州の気候・エネルギー政策を開く」Matthias Nabholz マティアス・ナブホルツ(Leit-er Amt für Umwelt und Energie 環境・エネルギー局長)の資料から

5 迫田章義・堤敦司著『改定新版 エネルギーと社会‘19』(放送大学教育振興会、2019.3.20)p160

6 環境エネルギー政策研究所  2024年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)https://www.isep.or.jp/archives/library/15158

 

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