「禅師様。日内変動禅師様。おえらい禅師様、私はまだまだ遣り残した事がたくさんあります。昨夜だって最期に五平餅を食べ残してしまった。それを思うと成仏なんてできません」
「困った奴じゃのー。わしは眠いと言うとるじゃろ。困ったのう……そうだお前に一ついい事を教えてやろう、ここから前世に通じる道が何本かある。うまく道が通っていればその道を通り前世に戻れるだろう。どうせ浮遊するなら探してみるのも一手かも知れん」
「そんな道があるのか。ようし、きっと探してやる」
「はて。うまく探せるとよいがのー。おーホッホ……」
原出太郎はゆっくりと歩きはじめました。「はじめは上りで行ってみようか」道はぼこぼこです。「なんだこのデコボコの歩きにくい道は」
「それがお前の血管だぞよ」禅師の声が聞こえてきました。
「えー……俺の血管はこんなになっていたのか」太郎は衝撃を受けました。進んだ先は鍾乳洞のようになっていました。下から上から鍾乳石や石筍が散在しています。
「なんだ、なんだ、この鍾乳洞みたいな土管は、それにヘドロがいっぱい溜まっている」
「原出太郎、それがお前の頚動脈だ。もう少しで詰まるところだ」禅師の声です。
「だ、だめだ。道が狭くてこれ以上進めない。この道はだめだ。そうだここを曲がってみよう。でも何だかここも狭いな」
赤い池がありました。一面オレンジ色の背景に真っ赤なプールが散在しています。窓も真っ赤。
「なんだ、ここは赤い水溜りがいっぱいだ。どうなっているんだろう」
「そこはお前の目の奥だ。そうして出血しているうちに目が見えなくなる」またしても禅師の声です。
「だめだ、先が何も見えない。この道もだめだ。もう少し下の道を探そう」「ここはどうかな?」
ところが進んだ先は道いっぱいの土砂崩れです。「だめだーこの道は土砂崩れで通れない」
「原出太郎よ。それがお前の心臓の血管だ、血管が詰まってお前は死んだのだ」
「やだやだ、こんな所に居たくない。そうだもっと下へ行ってみよう」
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