「三十日でお願いします」

「よし、わかった。それじゃ、僕の手料理でもてなすよ」

「えっ?」

「人の厚意は受けるもんだよ。僕は料理がうまいんだから」

「どこで?」

「僕んちさ。名刺に書いてある芦屋のマンションだよ。怖がる事ないよ。とって食いやぁしないよ」

「そんなの無理だわ」

「何だよ。兄さんの家に来れない妹があるか」

「……そうね」

私は妙に納得した。

「じゃぁ、三十日のお昼十二時に。マンションは、芦屋の駅を出て、北へ登る坂道が一本、それを五分ほど上がった左手の白い大きな十二階建ての一一七号。すぐわかるよ。わからなかったら電話してくれ。迎えに行くよ」

「わかりました」

「何も持ってきちゃダメだよ。君のお祝いなんだから」

「はい。ありがとう」

神矢はうれしそうな笑みをうかべてコーヒーをすすった。

次回更新は11月5日(水)、22時の予定です。

 

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