【前回の記事を読む】「あんた結婚するんだって?」「エッ、知らんけど」「あ、ゴメン。これ他の人とだったわ」ついこの間別れたばっかりの彼女が…

第1章 俺、都知事選に出ちゃいました。佐内雅彦の挑戦!

当選確率0パーセント 「失うものは何もない」

「選挙ってどこの? 町会長なんてご近所付き合いもないから無理やし、もう37 歳で学校に通っているわけでもないから生徒会に立候補もできませんよ」

「いやいや、そういうのじゃなくて、今度ある都知事選挙! どんなことをしても絶対当選はできないけれど、立候補するだけであなたの運命の歯車が回りだすから」

そんな馬鹿な―。人生なんぞどうにでもなれと思っている俺でも、さすがに「逆立ちしたって絶対当選できない都知事選」に出たいとは思わない。

「ちなみに選挙に出ないとどうなるんや?」と聞くと、「選挙に出ないとすると ……」易者は筮竹を鳴らして、その結果に青ざめ、もう一度筮竹を鳴らしたかと思うと今度は額に手をやって、ため息をついた。そして首を振りながら「鑑定料はいらないから」と言った。

おそらく選挙に出ないと、俺の人生は終幕を迎えるのだろう。

「出る出る。出ますって」

思わず口に出してしまったことに自分でも驚きつつ、鑑定料を置いてアパートに戻った俺は、翌日、契約していた保険を解約して供託金300万円を作って立候補した。