第2章 泡沫候補8人、ユーチューブでSNS界隈を騒がす!!

過去最高の65人が都知事選挙に立候補。空中戦の一つと言われるSNS戦略が注目を集めるなか、影響力のある「タビトの未来政経予測」に佐内雅彦はじめ泡沫候補8人が登壇――

そんなわけで俺は、政策すらまともに考えないまま都知事選に立候補し、座談会に誘われて今ここにいる。なんとか無難にこの場を切り抜けなければと心を落ち着かせて、雰囲気に圧倒されないように配られたジュースを一口飲んだ。

「まもなく本番に入ります」

エッちゃんがそう告げ、配電盤の横にスタンバイした。

天井付近に吊り下げられた大型モニターにカウントダウンの数字が映し出されている。

「3・2・1、オープニングトーク、スタート!」

エッちゃんがそう言いながらオンエアのランプをつけると、突然有名な『朝まで〇〇テレビ』という番組風の音楽が流れ、多比途が相棒の大学教授と共に少しおどけた歩き方で登場し、二人そろって前方のテーブルに着席した。

ただ俺たちはずっと座ったままで、音楽に合わせて入場する演出は用意されていなかった。

「ハイ、『タビトの未来政経予測』、今日も見ていただいてありがとうございます。本日は、とっておきのゲストの方々と1時間半の生放送を予定しております。

ご紹介しましょう。都知事選に参加され、独自の戦いをしておられる候補者の方々です!」

1台しかないカメラが俺たちの方を向いた。カメラマンを務めるのもエッちゃんだ。

モニターには俺たちゲストの面々が順番に映されていて、これが現在生配信している画面なのだと理解できた。さっそく視聴者から反応が入っているようで、動画の下にコメントが出る。

〈お~、待ってました! 今日は豪華だな。おもしろ草WWW〉

〈どんなとんでもない発言が飛び出すのかなワクワク〉

などという無責任なコメントが次々と画面上に流れた。