【前回の記事を読む】Youtubeで討論したら違法?…意外と知らない「公職選挙法」の落とし穴
第2章 泡沫候補8人、ユーチューブでSNS界隈を騒がす!!
過去最高の65人が都知事選挙に立候補。空中戦の一つと言われるSNS戦略が注目を集めるなか、影響力のある「タビトの未来政経予測」に佐内雅彦はじめ泡沫候補8人が登壇――
「というところで公選法に引っかからないように気をつけて配信していきますので、ゲストのみなさんは忌憚(きたん)なく政策を発表してください。もちろん、このチャンネルを見ていただいている視聴者の方からのコメントも大歓迎です。ただし『てめえは許さん。〇してやる』なんて物騒なことをほざく人は、ただちにブロックさせていただきますんで、ご了承ください」
ゲストの間からも笑いが漏れたところで、多比余は真顔に戻り「では始めさせていただきます」と開会を宣言した。
「それではまず、これまでに参議院選挙などに何度か出ておられます田乃郷陽介(たのごうようすけ)さんからお話を伺いましょうかね。田乃郷さんは以前このチャンネルに出ていただいたこともあり、慣れていらっしゃるのではないかと思います」
テレビカメラとそれに付随する照明が田乃郷と呼ばれる候補者に向けられた。
田乃郷陽介 高齢者が働きやすい社会へ「たのGO」提言
無 新 69歳 元海運会社会長
田乃郷は軽く咳ばらいをするとソファから立ちあがった。
〈あっ、いつも選挙に出てくるオジサンだ。この人、前の横浜市長選にも出てたよね〉
「田乃郷さん、けっこう認知度が上がってきましたねえ」
モニターの画面下に次々と流れるコメントを見ながら多比余がクスリと笑った。
「エ~、私、田乃郷陽介(たのごうようすけ)と申します。覚えにくい名前ですんでね。たのもう、たのGOと覚えてください」
2、3人が失笑したが、それは田乃郷のギャグが、あまりにもくだらなかったからだ。
「ハハ、場が和みましたかね。私は今年69歳で首都大学の教養学部出身です。今は息子に任せていますが、長年〇〇海運という会社を営んでまいりました」
それは結構有名な会社だ。自分のことで精いっぱいで、他の候補者のことはほとんど知らなかったが、田乃郷は意外と高学歴でお金持ちらしい。
「そんでもって、この都議選で訴えたいことは……」
「都知事選、都知事選、田乃郷さんの出ておられるのは都知事選です」
「ああ、そうでした。で、訴えたいことは高齢者に対する問題です」
田乃郷はボケ突っ込みがうまくいったと感じたのか上機嫌で話しだした。